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■ 第3章


何とか魔王を倒したバーン達。
しかし、それは大きな代償を払う事となった。
エルニアの君主、アルド王の命と、国に居た騎士団の8割が壊滅したのである。
アルド王の民を思う気持ちは本物で、群集が避難のため逃げ込んだ教会の盾となり、致命傷を受けた。
だが最後に渾身の捨て身の一撃と各所から戻ってきた、マールやマルス王子ら、一緒に戦った者たちの集中攻撃で、なん
とか辛勝できたのである。


しかし、国を守ると言う意味では負けと言ってよいのかもしれない・・・。
わずかに残った聖騎士団、王子や王女が集まっていた。
誰一人として魔物を退けた事を喜ぶ者は無く、偉大な王の死、仲間探す者・・この付近での民への被害も少なく無く・悲
壮な景色が広がっていた。
女騎士長のエオウィンが悲壮な顔をしながら、ふと、つぶやく「・・・国が泣いている。・・・アルド王・・・・本来な
らその役目、私のはず・・・」と涙を流した。
マールに至っては呆然とし言葉を発する事が出来ずに居る。
しかし王子と王女は毅然とした振る舞いをしていた。
王子は的確に瓦礫の下になった者を救出するべく、戦闘に参加しなかった物に指示をあたえ、王女は怪我をした者の回復、
亡くなった者への祈りを行っていた。
立場がそうさせるのであろうか、王族と言うのはこれほどのものなのかとバーンは何か出来ないかと王子の手伝いをする
事にした。
数刻した後、会議の席が設けられる。
会議と言っても、そこに集まった関係者の話し合いでしかない。
だが、今後を左右する重要な話があった。
昨晩、突然現れた魔族のうち、古代の魔王と歌われた大型の魔物は、なんと、人間の言葉を操り話しかけてきたのである。
魔物は、負ける気など露程も思わなかったらしく、頼みもしないのに色々と語ってきた。

 

エルニアに封じられた魔族が、これを機に復活しようとしている事。
封印はまだ完全に解かれてはいない事。
そして絶命する瞬間には、現時点で自分同様の魔王クラスがすでに他に6体程、封印の外に居ると言う事を言っていた。
「存在する人類、すべてがかかったとしても勝てる筈が無い。封印が解けたばかりで魔力の弱い私一人に勝てた所で、お
前達に残された時間は少ない。」
その言葉を思い出すとシンシアが口火を切った。
「私が魔物を倒します。」
王子、騎士団、その場に居た全員が目を丸くし驚いた。
しかし、となだめる側近の声に対して
「1000年前の悪夢を・・・エルニアが過ちを再び侵す事は絶対に、絶対に許される事ではありません。父が与えてくれ
た、この少ない時間のうちに、絶対私が倒してみせます。」
とまっすぐな目をしたシンシアが全員を見据える。
王族の立場からだろうか・・・なぜここまでとバーンは思った・・が良く見ると肩を震わせている。
当たり前だ。良く考えれば王族とは言え、自分とは歳も指して変わらぬ女の子が、目の前で父親を亡くし、国の存亡、ま
して圧倒的な魔族と戦う覚悟等、自分にどれだけ出来ようか・・・。
「それならば私が行くのが筋だろう」とマルス王子が追いかけるように言うと、シンシアはクビを横に振る。
言葉に詰まるシンシア見て、エオウィンが「マルス様。発言お許しください。アルド王亡き今、国を導く方が居なくてな
んとしましょうか?」
エルニアの王子マルスは剣や魔法の腕こそ人並み以上だが、英雄と歌われている両親や、屈指の才能と言われるシンシア
と比べると、その才は無いと言われている。
しかし、その事を十分に理解し、決して奢らず、腐らずのマルスはアルド王とは違ったカリスマ性を持つと言えた。
エオウィンは続けた。
「特に絶対的な英雄として、戦を回避できていたあろうアルド王の不在が知れ渡れば、大陸外からの侵略・・・戦争すら
考えられる状態と言えましょう。」
アルド王は確かに百戦錬磨の戦力であり、その名声だけでも十分な防波堤となりえた。
しかし、その王が居なくなった事を懸念するのではなく、マルスが参謀としての才に長ける事を十分に理解しているから
であった。
戦争ならば一騎当千のアルド王頼みではなく、1000人の凡人で無駄なく同じ結果以上を出せるだろうマルスは必ず居な
くてはならない。
特に、もう死ぬことは許されないこの国の王としては、先頭を駆けて士気を上げるタイプのアルド王の様では、正直いさ
さか心配である。
「確かにそうかも知れないが、みすみす危険な場所に打って出る事も無いだろう?まずは各国に知らせ、協力要望を伝え
る方が先決だろう?」とマルスも妹思いのため、シンシアを危険にさらしたくないのか譲らない。

 

「お兄様は今や王の立場にあります。民を守った上、各国に知らせる、その仕事こそが王の役割かと思います。その上で
魔族を追う必要も、このエルニアの発端としての使命があるはずです。」とシンシアが食い下がる。
「あの魔王の話だと、まだ少しは時間はありそうだ・・・だが、いつ封印が解けてもおかしく無い。どこに居ても危険で
ある以上、ここは一つ打って出るのも一つの手かと。」と今度はマール。
「確かにどこに居ても危険・・・か。父上譲りの頑固さだな、相変わらず。」とあきれたマルスが言うと「母上に似た芯
の強さと仰ってください。」とシンシア。
「いくら強力な敵とは言え、一個師団を抱えて動くには小回りも効きません・・・少数精鋭が好ましいかと。」とエオ
ウィンが言うとマルスもふむ。と頷く。
「騎士団長エオウィン・オルレアン、妹を・・・姫を守る小隊の隊長任務を任せる。頼めるか?」
「マルス様、承知いたしました。」と行くのが当たり前と言う顔で承諾する。
「人選は任せる、動きやすいメンバー構成にすると良い、必要ならば国の守りのため各地に駐屯させている騎士団も国に
呼び戻すつもりだ。その中の隊長クラスを連れて行っても構わない。」と言うと側近にあれを用意すると王宮に向かった。
「マルス様、よろしいのですか?」と側近が心配ながら声をかける。
「言うな・・・これから和平の会談でも忙しくなる・・・。特にブラバンド、ネウストリアは急がなくてはならん。その
席に、王が不在では、事が進まないのもまた事実。」
「そして、何より魔族の事が世界に知れた時に、王女自ら魔族の後を追った、というポーズは大事になってくる。・・・
代われる物ならば代わってやりたい・・・。しかし、これも王族。父の・・・アルド王の教えの通りにするならば、王族
は民の為に自分を捨てなければ・・・。シンシアもそれを分かっているはずだ。」と寂しそうな顔を、一瞬だけしたマル
スは王宮に消えていった。
「これから大変だな、騎士長」とマールが言うと「私が大変なら、当然お前も大変になるな。お前も当然、行くんだ
よ。」
「まじか~~~っ、と言いたい所だが、今回ばかりはアルド王の借りがある。絶対に返さなければ気がすまない。」と何
時も、どこかひょうひょうとしているマールも今回は本気の顔付きであった。
エオウィンはバーンと目が合うと言葉を掛けた。
「バーン、お前はどうする?騎士試験に合格したとはいえ、まだ正式にはこの国の騎士ではない。無理に着いて来いとは
言えないが・・・。」
「そうですね。今のままでは一緒にはいけません。」と返事をすると少し残念そうな顔をするシンシア。
「ですので、今すぐに騎士になる儀式をしてください。シンシア様。」とバーンが言う。
「おい、意地悪いな。へへ、お前なら来ると思ったぜ、まだまだアマちゃんだから足引っ張るなよ?」とマールが言うと
「わしも連れて行ってはくれぬか?」と魔術師の格好をした男が話しかけてきた。レウニスである。
「元々は、わしが今回の出来事の引き金を引いたのも事実。もう、取り返しも付かない事も重々承知だが、出来る事があ
るのならば、役に立ちたいのじゃ。」
たしかに、罪人の身であるが、レウニスの知識と魔術は非常に役に立つ。
少数精鋭でのこういう旅には、絶対に欠かせない人物と言っても良い。
「分かったが・・・禁術を唱えるのはやめろ。おかしな動きをした場合はその場で切り捨てるぞ、いいか?」とまだ信用
しきれないのかエオウィンがきつく念を押す。
旅支度を終え、王宮に集まる。
シンシアは国宝の衣と、母の形見である短剣をマルス王子に託されていた。
まず、目指す国は信仰の国ルーメニアになると言う。
友好国で、元女王の出身国であるので協力を仰ぎやいのも狙いの一つだが、ルーメニアの図書館は大規模で1000年前の
古書は城ごと無くなってしまったエルニアとは違い、レウニスの考えでは1000年前の事件以前の古代の書も残っている
可能性は高いと言う。
エルニアの書物では、1000年前の悪夢の事後の事、などは調べられるが、残念ながら魔族の事柄に関しては難しいと。
ルーメニアはエルニアの隣国であり、本来、飛空艇で半日もあればいける国である。
しかし、魔族の出現により、エルニアの飛空艇は飛べる状態には無い。
一行は海に出て、船による迂回の選択を余儀なくされた。
出国の際、小規模であるがアルド王と、先の戦いで亡くなった者の追悼を行う。
プリーストとしてシンシアが祈りを捧げたあと、一行はひっそりと旅立つ。
王の前で狙ってペンダントが使われた以上、貴族等が命を狙っているかも知れないと考えたからだ。
旅立つ道すがら、見据えるエルニア城は、静かに光るマナの球体の光に包まれ、物悲しく映り本当に国が泣いている様
だった。
バーンもまた数えるほどの会話しかしてない王ではあるが、心に穴が開いたような気持ちになった。
王宮から港まで半日あまり。
途中、城下街で宿を取る事にした。
シンシアは別室を取るとエオウィンに話かける。
「エオウィン・・・お願いがあります。今から・・・誰もここを開かぬようお願いします。」
「・・・シンシア様分かりました。たとえ魔族が来ようともこの命に代えてお守りいたします。」
「ありがとうエオウィン、少しの間だけでいいので女王である事を忘れさせてください。明日には必ず元にもどりますの
で・・・・」
消え入りそうな声のあとシンシアの泣き声が響いた。最愛の父を亡くした悲しみは少女に重くのしかかっていた。
翌日、港に着く。
数ヶ月前、夕刻に来たときとはまた別の顔見せる。
やはり港から見る海は美しかった。
晴天の空、地上からは、やはりマナの球体が出ており海の水面を、よりいっそう美しい物にしていた。
だが、何処かおかしな事に気がつく。
海の見通しが良すぎる・・・。船の数、それ自体が少ないのだ。
ここから隣国と言えど、時期的な岩礁を避けるため船だと2週間程度は掛かる船旅になる。
それなりの腕の良い船員と船を用意しなくてはならなかった。
一行は船を捜すが、やはり船その物の姿が少なく、船員の数も少ない。
「先日の魔族のせいか?」とエオウィンが言うと「情報は来てるかもしれないが、ここまでは被害は及んでいないは
ず・・・・情報を集めてみようぜ?」とマールが答える。
仕方が無く情報を集めに酒場に行くと船員たちがやさぐれて居たがシンシアの姿を見て騒ぎ立てる。
「ま、まさかシンシア様自ら足を運びくださるとは・・・」と謎の対応をされる。
魔族の話かと思ったが、どうやら違うらしい。
話を聞くとここ一ヶ月、急に海の魔物が暴れだしたと言う。
特に神出鬼没の幽霊船が厄介で、船を出す状態では無い。
王都には要請を出していたので、対応をしてくれたのばかり思っていたようだ。
それを聞いたシンシアは、しばらくした後、良い案があると言い出した。
「その魔物達や幽霊船を、どうにかしてかわせれば問題ないのですよね?」
「まぁ、そういう事になるな・・・?」と、そんな方法あるのかと疑う船員達。
「では、空を飛んでいけばいいじゃありませんか!」
「船はとばねーよっ!!」と、一同が突っ込んだ後にエオウィンが「皆すまん、姫様は飛空艇しか乗った事が無いの
で・・・」と謝って回り、シンシアはしょぼんとしていた。
「けっ、何が飛べだ。ばかばかしい。要請しても、なんともしてくれないのに自分が乗る時だけ船をどうにかしろだと?
てめー達で何とかしやがれ!」
と普段は王族はあがめられる存在にあるが、空腹と苛立ちからか船員は一行を攻めた。
ここで民相手に揉める訳にはいかないと、シンシアは酒場を後にする事にする。
「うははーっ!」と、やる気になっていたエオウィンは少し肩を落とした。
港に数少ない船員が居たので声をかける。
すると、海に出ようとしている男がいると言う話を聞く事ができた。
その男は海に出るため、戦士を探しているそうだ。
男の元を訪れる一行。
目前に現れたのは、バルバロス・ティーチを言う男であった。
男は右手もなく、左足も義足、右目も眼帯をしており、思わずアルテミィア神に生あることを感謝するシンシアが居た位
の状態であった。
「いいか?覚悟の無い奴らは語るな。これは命がけの出航だ。」
バルバロスは自分の船が襲われ、仲間は皆殺しに合い、自分は右手、左足、 右目、そして船と親友を奪われたという。
少し心配であったが、まるで前からその義手と義足を使っていたかのように器用にあつかい、気性は荒いところもあるが、
新しい船員達への指示も的確で、信頼を得ているように見えた。
「金はいらねぇ。何よりもあの船だ。あの船さえ何とかしてくれれば、エルニアの裏にだって連れて行ってやる。」
海の上での戦闘は予想以上に難しいが、止めた所で道がある訳でもない。
何より民が望む事ならば、とシンシアはその話に乗る事を了承した。
新しい船、『ジャックスパロウ号』を得た一行は海に乗り出す。
大きさは、船員とこのパーティーにしては十分すぎる大きさで、専門のコックまで居ると言うのはバルバロスの拘りであ
るようだ。
出向の際に見えるエルニアの城下街は、先の出来事など無かったように佇む。
海は穏やかな水面に船の美しい波紋とマナの光が交錯し、幻想的な絵を写し出した。
とても、荒れた魔物が襲ってくるとは考えられない、くらいの海であった。
初めて船に乗ったシンシアが、船酔いから開放された出航から2日程たった頃であろうか。
急に海がざわつくき、嘘のように天候がおかしくなる。
一行の前には深い霧から、おぞましい雰囲気を纏って現れる船が遠くに目視できた。
バルバロスが言う。「あれが元々の俺の船・・・ドレーク号だ」と、そして舵を握っているのは…。彼の奪われた友人だ
と。
「船乗りではおとぎ話のはず・・・だった。セイレーンの声を聞いたのさ・・・・。一人、また一人とおかしくなり・・。
死に損ないの俺をかばい、ティーチのやろうは・・・。」
幽霊船の周りはすっかり暗く、辺りは時折雷が鳴り響く。
見た目もすっかり老化し、ひと月前まで運行していた船にはおおよそ見えない。
船の甲板に人影は見えず、無尽で不気味に漂う船に見えた。
「いいか?あの船はただ漂っているような生易しいものじゃない。周りに魔物を引き寄せるようだ。今はまだ他の魔物も
居ないが、時間が立てばクラーケン等の化け物を見たと言う船も居る。行方不明になった船は、皆仲間に引き込まれたと
言う話だ。」
「今のうちに内部に入り込み、俺の仲間を・・・どうか俺の友を解放してやってくれ。頼む」
と言うと船が怪しげな霧に包まれる。
目の錯覚だろうか、徐々に姿を現したのは甲板を所狭しと並ぶゾンビ化した船員だった。
「くっ遅かったか・・・」と嘆くバルバロスを横目に
「おっほー、スゲー数だなおい!」と嬉々として興奮し始めるエオウィン。
マールはすぐに、エオウィン以外のパーティをジャックスパロウ号のともの部分に先導する。
「おい、バーンいいか?多数との戦いはどうしても背後が穴となる。特にお前の戦い方は1対1には良いがこういう戦い
は少し危ない。」と弓を用意しながら語るマール。
それに習うように、バーンもクロスボウをセットし始める。
「いいか?俺達は姫様の護衛につくが、なるべく俺との背中を意識してお互いの背後を守るように、姫様を間に挟むよう
にして深追いはするな。危ない時は声を出せ。」
「了解!」とバーンが言うと、弓や剣が薄っすらと赤く光る。
「一時的に炎の属性を纏う魔法剣にした。信仰魔法ほどではないにしろ、アンデットに効果を期待できるはずじゃ」とレ
ウニス。
「おいおい、幽霊船ごとこの船まで燃えたらどうするんだ?」と言いながら甲板に向けて矢を打ち放つマール。
エオウィンに至ってはすでにドレーク号の甲板に降りて派手に剣を振るう。
「おい見ろよ、炎の剣であんなに大暴れすると、まるで炎のコマだな・・・」と冷静なマールに対し
「あーはっはっはっはーー!いいな!お前ら、もっとかかって来い!」と妙なハイテンションのエオウィンが居た。
「・・・正直あっちの甲板に下りたら自分の身が危険なような気がするよ」とバーンがマールに言うと。
「試して来いよ。おそらくあの数のゾンビ達に立ち向かうより勇気いるぜ?」と茶化す。
他愛も無い話だが、おかげで緊張が解れた。
「しばらく詠唱に時間がかかりますが、その間よろしくお願いします。」とシンシアが祈りをはじめた。
バルバロスら船員も、甲板の瀬戸際で応戦するも数が多く、こちらの船にも大分乗り込んできたので弓を下ろして剣での
応戦に切り替える。
バーンはここまでの乱戦の経験は無いが、基本1対1になるので、何とか応戦できた。
これも、マールのアドバイスと、立ち回りの上手さによるものを実感する。
そして魔法剣の威力と、レウニスの魔法の威力も目を見張るものがあった。
レウニスの詠唱は素早く、威力は一気に10人は吹き飛ばす勢いで、少し離れた船員らを守っていた。
しかし、レウニスとシンシアを護衛しつつ、敵を倒すがあまりにも多すぎる。
どの位、敵を倒したのか。
殆ど、数え切れない程になっていた。
終りはあるのだろうか?体力は持つのだろうか?と不安がよぎるが考えている暇は無い。
なんとしてもシンシアを守らなければならない、そんな使命感でバーンは自らを奮い立たせる。
「お待たせしました。」と詠唱を終わったシンシアが、目を開き立ち上がる。
正直、バーンはこの少女がどれ程の事出来るのか、ほんの数秒後まで信じる事が出来てはいなかった。
シンシアが聖魔法を空に向かい唱えると、一瞬にして船は白い光で包まれる。
次の瞬間には、溶けるように次々と空に浄化されていくゾンビ化した船員達。
あっ、と言う間に看板に居た敵全員が居なくなったのである。
あまりにも圧倒的であった。
正直、魔法と言う物が、ここまでとは思わなかったバーンはあっけにとらわれる。
特にシンシアは、この歳でハイプリーストであり、歴代でも屈指の器と言われる程である。
守らなければいけない、お荷物などではなく、十分な実力を持つ大神官である事を確認させられた。
「守られたのは・・・俺の方か・・・」とバーン
「ふう・・・シンシア様さすがです。もう少し遅くても私は全然構いませんでしたが。」と笑いながらエオウィンが言う
と「ありゃ、ただのストレス発散の動きにしか見えなかったよな?」とマールが笑いながら、この結果が当たり前のよう
に動じず話す。
その瞬間、操舵室が開き、フラフラと一人の男が出てきた。
エオウィンが瞬時に身構えるが、もう相手は戦える様子ではない。
何とかバルバロスの方を向くと「あり・・・が・・・とう」と言う言葉と共に、空に浄化された。
「彼らの魂をどうか・・・・」と元に戻った青空に祈りをささげるシンシア。
こうして、海上の足を得た一行は信仰の国、ルーメニアに向かう為に舵を取るのであった。

 

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