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■ 第四章


信仰の国ルーメニア。
ルーメニアの多くの人々は勇気と平和の月神アルテミィア信仰または、武器を放棄したクレリックの慈悲と友愛の大地神
ヴィシャンヌ信仰も盛んな、まさに信仰の国である。
国の入り口の港から大きく圧倒される壁画、ストーンヘンジや石造が立ち並び、遠くから目視出来る大きな山を切り崩し
た石造が並ぶ様は圧巻であった。
単なる信仰だけでなく、こうした石造りの得意なドワーフから受け継いだとされる、石造作りの技術等も発展しており、
職人としての腕のみならず数式に置いた幾何学的な物にも強い。
ルーメニアの土地には大きなドラゴンや鳥と言った地上絵があるが、飛空艇が飛んではじめてそれが地上絵である事が分
かり、飛空艇の技術は元々ルーメニアの技術だと言う説もあるほどだ。
一行はルーメニアの王宮に一番近い海の入り口、港町のセノーテに着いた。
セノーテの街もまた美しく、とても幻想的な鍾乳洞が多くみられ、所々にルーメニアの誇る石造が神秘気的にたたずんで
いた。
ルーメニアの人々は信仰心から殆ど自給自足だが、振る舞いの際には魚や肉も許されるのでここセノーテはルーメニアの
台所として賑わい機能していた。

 


「よかった、まだここは無事のようですね。」シンシアが祈りのポーズと共に安堵の声を上げる。
「本当に活気があって美味そう食材が並んでるな!買出しはしておくから船は任せておけ!」とバルバロスはエビニア王
宮からそれ相応の賃金が出る事を知らされると態度が変わっていた。
「こんな街にも・・・魔族が現れたらすぐに・・・」とバーンが言いかけると「それをさせない為の旅だろう?弱音を吐
くな。引きずられるぞ?」と騎士長らしくエオウィンが答える。
「ここからルーメニア王宮までは飛空艇が出ているはずじゃが・・・」とレウニスが言うが、様子がおかしい。
どうやらエルニアの事件により飛空艇の予定航路や時間などが大幅に乱れ、運休が中止されているようだった。
一行は足を止めても運行の見通しは着きそうにない。
昔からの移動手段である巨大な亀と象のような生き物ガナパティに乗ってルーメニア王宮を目指す事にした。
「ガナパティでも、セノーテからルーメニア王宮までは普通の経路ではなく、ダルキナ砂漠を越えて行けば7日程で着く
はずじゃ。旅支度を整えすぐに出発しよう」とレウニスが提案した為である。
「ダルキナ砂漠か・・・中央に行くならともかく、ルーメニア王宮までの7日程度なら大丈夫か?」とマールが考えなが
ら言う。
「中央は危険な魔物も多いですが、王宮までの道ならば、ガナパティ様に乗せてもらえるのなら安心ですね。昔はそうし
て移動してたといいますし。」とシンシアとエオウィンがガナパティの交渉に行く事にした。
「砂漠はそんなにきついのか?」とあまりに大げさな振る舞いに疑問に思うバーン。
「空飛艇が使えない為か、ここしばらく王宮との人の行き来が止まっているらしいが、戻ってくる人もまったくいないら
しい。」
「バーン、もしもの時を考えて食料はあまりかさ張らない物を用意しろよ?いざとなれば現地調達も可能だ。あと防寒具
もな。砂漠の温度差は想像以上にきつい。」とマールがアドバイスをくれた。
乗り場付近に着いたが、ガナパティは圧巻であった。大きな亀で背中には人を乗せるられる小屋のような物があった。
「これを操れるのか?暴れたりしたら・・・」とバーンが言うと
「ガナパティ様は操られるものではありません。私達の信仰を汲み取り乗せていただけるのです。私達の信仰が尽きない
限り決してお裁きになる事などないでしょう。」と案内役がいかにもルーメニアと言う言葉で返してきた。
普段一般人では乗れるような物ではない崇高な生き物らしく、ルーメニア出身のエルニアの元女王ルナの娘シンシアが居
なければ、乗る事はできなかったであろう。


そして一行はルーメニア王宮に向かう為ダルキナ砂漠に出るのであった。
ガナパティの乗り心地は良く、移動する家と言って過言ではなかった。
しかし、確かに歩くよりは早いが、もう少しスピードが出てくれたらと罰当たりな事を考えていたバーンにシンシアが話
しかけてくる。
「母がエルニアに嫁ぐ時、母は飛空艇ではなく、こうしてガナパティ様に乗せられエルニアに向かったそうです。」とシ
ンシアが遠くを見つめながら話す。
「ここの道はダルキナ砂漠でも中央ほど危険はなく、当時はルーメニアに続く神聖な道としていたそうです。」
「そしてこの道ではケツアルカトルと言う蛇の様な神様が時々姿をあらわし、困ってる人に知識を授けてくれるとか。」
シンシアは母の国を知って欲しいのか、優しく説明してくれた。
バーンは心地よく説明を聞いていた、不謹慎ではあるが島育ちで世間をあまり知らない自分にとって、旅は面白く世界の
広さにわくわくしていたのである。

 


セノーテを出て6日程たってから、しばらくした頃であろうか。
大地が突然ゴゴゴゴとゆれ始めた。
ガナパティも立ち止まり、案内役も周りを確認する。
地震のようにも感じるが、段々物音も揺れも大きくなると砂漠に砂走りが起こった。
「ひょっとして・・・ケツアルカトルが来てくれたとか?」とバーンが言うと「いや・・・これは・・・まずいかもしれ
ないぞ?」とマールが緊張の面持ちで待機した。
砂走りはガナパティの付近で一旦止まると、近くに砂を撒き散らすように姿を現した。
「サ、サンドワーム」とマールが叫ぶ。
「まずい、あやつは300年は生きとる大型のタイプじゃ!」とレウニスが叫ぶが本当に大きく遠くから見ればガナパティ
が小さく見えるほどであろうか。
「うっほーーーー!すげーなあいつ!」と、やる気満々のエオウィン。
「待て待て待て待て、無理無理無理無理!絶対無理!人類じゃ勝てない!魔族の前に命が死んじゃう!」とマールが必死
にエオウィンを止める。
「私ミミズは苦手です。」と、変な所に冷静だが、役に立たないハイプリーストが一人。
いろんな意味で「どうするんだよ?」とバーン言った瞬間どーーんっと外に投げ飛ばされた。
気を失っていたバーンが目を覚ました時には、サンドワームは消えていた。
レウニスの視界を奪う魔法と、マールの消音による魔法で難を逃れたのである。
「しかし、この様な場所にサンドワームとは・・・おかしい」とレニウス。
「魔物は魔族とは違います。自然の驚異みたいなものですから」と、どこか能天気なシンシアを横目に、マールの説教が
始まっていた。
「目を輝かせて真っ先にサンドワームに飛び込もうとする隊長が何処にいやがる!この戦闘ジャンキーが!」
「ば、馬鹿だなぁ、みんなの緊張をほぐしてやろうと・・・・だな。冗談に決まってるだろ。」と目が泳ぐ。
「ははは・・・サンドワームでも勝てるかもしれないな・・・」と、うなだれるマールが居るも何とか無事だった事に一
同がほっとする。
しかし、残念な事にガナパティは足の怪我をしていた。
この先からは徒歩で行く事となったが、すでに砂漠も道らしくなってきており、石造の数も増えてきた事からルーメニア
王宮は近い事は伺えた。
その様子を、大きな山をくり貫いた石造の上から見下ろす姿があった。
「サンドワームはかわしたか・・・・ブラック。あの人間ども、少しは楽しませてくれるはず。」
「・・・・・・・」

 


大分歩いたであろうか、王宮側まで来ている事は確かなのだが人影が全く無い。
王宮の近くには、大きな都市があり参拝のものであふれているはずであり、飛空艇が使えないとは言え全く人が姿を消す
事は考え難い。
近づくと、はっきりと分かった。
神の存在を信じ、絶対平和主義を唱えた都市は今や見る影もなく廃墟と化していた。
その絶望にシンシアは膝をつく。「なぜ、なぜこんな惨いことを…」
それでも人を探しながら崩れた王宮に近づく「これはおかしい・・・」エオウィンが口にするが誰もが思う所であった。
外は気がつけば、夕刻に近かった時間とはいえ、まだ昼であった空が闇夜になっている。
夜のそれとは違う、その雰囲気は異様であった。


シンシアが周りを明るくしようとライトの呪文を唱える。
「おい、お前たち、今日、夕暮れをみたか?」
背筋を冷たい物が走った。
言葉を発するより先に全員が身構えた。
声のするほうに視線を投げると二つの物体を発見できた。
まがまがしい雰囲気を持った衣に黒帽子。
無言の威圧感を発し、こちらを見据える。
そして、その横にもう一つ、鳥のような大きな羽を優雅に羽ばたかせながら、顔を布で覆った人型の生き物が降りてきた。
塞いだ眼の代わりか、その首からは仮面がさげられており、その額の部分には赤い瞳のように宝石がはまっていた。
発する雰囲気から魔族だと確実に分かる何かがある。
「いやー・・・・ここも少しはマシになっただろう?臭くて臭くてたまらなかったんだぜ?」羽付きの魔物が人間の言葉
で、語りかけてくるが誰も返事はせず、身構えて様子を見る。
羽付きは続けた。

 

「本当に、いやな匂いがしたんでな。吐き気をもようすような臭い・・・・・「信仰」とかって匂いがよ!」
「だから綺麗にしてやった。お前らも臭くないだろう?」ゲラゲラゲラゲラゲラと大笑いする羽付きの魔物。
そして、羽付きの魔物は太い鍵爪のついた腕をバーン達にむけた。
「せめて、3 秒はもてよ。全員で15秒だ」
その言葉に、堰を切ったようにエオウィンが飛び出した。
「お前の大笑いする口の方がくせーぞ!」とクレイモアで猛攻を始める。
羽付きの魔物はエオウィンの攻撃を鍵爪で受け流しながら「ブラック、お前は、なにもするなよ。つまらないからな」と
臨戦態勢を取る。
「おい、あの早い剣速を簡単に受け流すのか?」と身をもって知るバーンが言う。
「あの魔力・・・あやつら二匹とも確実に魔王クラスじゃ、下手な魔法は吸収や反射・・・逆に危険かもしれぬ。しばら
く様子を見て術は補助魔法にするのじゃ」とレニウスは構える。
「分かりましたと」とアンチマジックの呪文を唱え始めるシンシア。
「おい、バーン何もするなと言っていたが、あのもう一匹の黒い魔物も何をするか分からない、十分注意して心構えろ!
騎士長はああなったらもう止まらない、羽付きは騎士長に賭けるんだ。」とマールが言うと弓の準備を始めた。

 

エオウィンのとてつもない猛攻であった。
おおよそ人間のそれを凌駕し、あの大剣をこうも正確に早く打ち込めるのかと驚く程である。
「うっはっはっはっはーーー!何が15秒だ!この唐変木が!」完全なハイテンションである。
「ぬう、人間にしてはやるな・・・・」と羽付きの魔物は少し押され気味であった。
そこへ、後ろから二人に向け弓を構えるマール。
「いけません、エオウィンにあたってしまうかもしれません」と心配するシンシアをよそに「大丈夫です!」と言うと、
なんと、戦っていたエオウィンの頭に目掛け、矢を放ったのである。
誰しもがエオウィンにあたると思ったが刹那、首を横に傾けるエオウィン。
矢はエオウィンをすり抜け、羽付きの悪魔にとっては、突然出てきた矢に顔面を打ち抜かれる格好となる。
「ぐあぁぁ」とよろめく羽付きの悪魔をエオウィンは見逃さなかった。
一気に下から胸を切り上げると、返す刀で首元を切りつける。
さらに回転した勢いでの突きが何度も決まった。
誰の目にも勝利が分かるほどであった。

 

「ば、馬鹿な・・・俺様が人間などに・・・・」と言うと、その場にどさりと倒れこむ。
「すげーぞ!さすが人類代表!」とマールが言うと「やりましたエオウィン!」と言うシンシア。
肩で息をするエオウィンだが、すでにブラックと呼ばれる黒の魔族に意識を集中していた。
そう、まだ終わったわけではない。
バーンにしても、レウニスにしても、エオウィンの活躍を横目にずっと黒の魔族ブラックを注視していた。
すると、羽付きの魔物の方から薄っすらと声が聞こえた。
「はっはっはっはっは・・・・あーーーはっはっはっはっはゲラゲラゲラ。」倒れたまま大笑いする羽付きの魔族。
「スゲーゾ、サスガァニンゲンだいひょぉーーー、やりましたぁーーえおうぃん~~~だってよ~~~ゲラゲラゲラゲラ。
傑作だ!」と大笑いしながら立ち上がる。
「おい、まさか・・・あの連撃を食らって平気なのか?」と弓を構え直すマール。
「倒せたと思ったか?本当に倒せたと思ったか?ゲラゲラゲラ。」と大笑いしながら続ける。
「残念だったな。人間程度じゃ俺クラスの魔族に、そんな柔な攻撃は通用しない。今頃エルニアに居たアガレスも復活し
てるかもなぁ?」と完全回復したのか鍵爪を振り下ろし構え直す。
「まぁ、人間にしては頑張った方だ、後1万回位同じ事を繰り返せば、俺様も消えてなくなるかもなぁ?ゲラゲラゲラ、
それが人間のお前に出来るのか~~?ゲラゲラゲラ」
「何回だって・・・私が回復します!」とシンシアが回復魔法を唱える。
「しかし、人間ってーのは本当に傑作だゲラゲラゲラゲラ。面白いほど騙されてくれるしな。」すると、布で覆った顔変
形をしだしたと思うと、顔の布を剥ぎ取る。
「だから言ったのです。シンシア様!魔法の力をもっと強固にしなくてはいけませんと!」と、人間の顔になり、話はじ
めた。
「あの顔は・・・」とマールが言うと「館長か!?」レニウスが叫ぶ。
エルニアの図書館の館長であり、魔法研究の最高責任者である館長のブラームスのそれであった。
「元々封印は弱ってたって訳さ!お前らがせっせと土壌にあるマナをどかしてくれたおかげでな。大体、人間一人が魔族
を抑えつけるような封印を、自力で解ける訳が無いだろう。なあ~~レウニス~!」とゲラゲラ笑う。

 

「頼みもしないのに、良く喋る・・・・」後ろからエオウィンが、いつの間にか背後に回り斬り付ける。
「ぐっ・・・・」たまらず飛ぶ羽付きの魔物は続けた「俺は楽しい事が大好きなんだよ!いいのか?話を聞かなく
て・・・お前達のがっかりする顔は、楽しくて仕方がないのだが。」
エオウィンは羽付きの魔物が話をしている隙に詠唱を始める。
「んーーーーそうだな・・・・やはりあの姫さんが居なくなれば・・・・お前ら面白いだろう?」とシンシアに狙いを定
めたのか、シンシアの方を向きニヤリと笑う。
「たかが魔族の分際で!させるか!」と空中に居る羽付きの魔族に向かいエオウィンも飛んだ。
「お、おい、飛んでる!?」とさすがにバーンも驚いたがレウニスが冷静に答える。
「あやつは自身に対してだけじゃが、風の下位精霊シルフを操ることが出来る。少しの間なら、飛ぶ事も出来るのじゃ。
あの大剣の扱いも、シルフあっての物じゃ。」
「どうじゃ、素晴らしいだろう?精霊とはf、ぽpz:あ」この大変な時に変なスイッチを押してしまったらしく、語り
だしたレウニスを放って置くとバーンは戦局を見つめる。

 

空中で、それはやらせまいとエオウィンが応戦すると「お前人間にしては本当に面白いな・・・・・おいブラック!」と
黒の魔物の方を向き声をかける。

無言で頷き、高速でシンシアに向かう黒の魔物ブラック。
「おいバーン!」とマールとエオウィンがが言うと同時か、バーンはシンシアと魔物間に入り応戦した。
剣を使うこのブラックと言う魔物は逆に、バーンにとってやりやすかった。
連撃を盾と剣で受け流すと、あたらないまでも止めるには十分な反撃のけん制となる。
それを見て様子ばかり見てはられないと、シンシアは聖魔法を唱え始めた。
「おい、その調子だバーン、せめて詠唱が終わるまで、なんとかもってくれ、俺も今行く」とマール。
しかし、慣れない盾で何と受け流すが、少々分が悪い。
何とか連撃を盾で受けると、ブラックの顔面に向け、シールドバッシュのように盾で殴りつける。
すぐにブラックは、片手で盾を横に弾くと、盾は飛んでいった。
目の前に居るはずのバーンが居ない。
視界を奪ったほんの一瞬の隙に、盾を捨て横に立つバーン。
ブラックが気がついた時にはバーンは、すでに、両手での振り下ろしの準備をはじめている。
(首とはいかなくてもせめて腕一本・・・!)バーンの高速な振りおろしがブラックの肩に決まる。
「浅いか!?・・・決まったと思ったのに」とバーンが嘆くが、たまらず肩を押さえ「・・・・・ニンゲンニしてはヤル
ナ」とブラックがはじめて口にする。
瞬間「人も結構やるだろう?」とブラックの背後から鋭い目をしたマール。前を見ていたバーンでさえ気がつかぬ程見事
な立ち回りの中、静かで恐ろしい殺気を放ち、背中を切りつける。
「大量の毒を盛った。魔族に効果があるかは知らないが、少しは効果あるはずだ。」
一瞬、怯むブラック。分が悪いと見たか、空中にその体を移動させた。
「おい、いいのかなぁ?お前らの大事なシンシア様の守りがお留守だぜ・・・・・」と羽付きの悪魔が言う。
向こうを見ると詠唱の効果が切れたのか、エオウィンは地面に降り立ち、肩で息をしていた。
「まずいぞ、あいつも飛べた上に羽付きも自由に・・・」マールがあせりだす。
シンシアの姿をみてもまだ詠唱は完成していない。
一気に詰め寄る羽付きの悪魔。

 

バーンの鼓動は早くなった。
絶体的な危機であった。
急いで戻るが、やはりシンシアの魔法は間に合いそうにもない。
すると「ここが使いどころ・・・じゃ」とレウニスが水晶を取り出すと、水晶から魔方陣が現れ、辺り一面は不思議な空
間に包まれる。
羽付きの悪魔は攻めるどころか、不思議な魔方陣から弾き飛ばされた。
急いでシンシアの元へ集まるエオウィンやバーン。

「一体何をした?」と、エオウィンが問いかけると「魔方陣の水晶をつかった。」と答えるレウニス。
魔方陣の水晶。
エルニアの魔法研究に置けるアイテムで、エルニアの国宝。
何百年の歳月を経て作られたこの水晶の効果は1度きりだが、その場にアンチフィールドを作りだし、味方も敵も同様に
魔法、物理攻撃の一切を受け付けなくなる。
邪悪なものを進入させない結界としても効果があり、数百年は効果が持続すると言う。
「国宝じゃないか・・・いつの間に」とエオウィンが詰め寄ると「国宝だろうと、この様な魔族を相手にするのに最適な
物を用意をしたまでじゃ。姫様の命に、国宝など安かろう!」
確かに、と言う顔をして、押し黙るエオウィン。
魔力を断ち切られ、詠唱を中断したシンシアも立ち上がる。

 

「ちっ・・・こんなものを用意してるとは、面白く無いな」と苛立つ羽付きの悪魔。
「どうするんだ?このまま数百年周りが砕けて無くなり、人間どもが死んでゆく様をそこから眺めるか?」と続ける羽付
きの魔物に対して、静かに近づくていく黒い魔物ブラック。
「オイ・・・コレを。」とバーンにやられた肩の傷をブラックが羽付きに見せると「・・・・傷が治らない・・・だ
と?」しばらく考える。
「そうか・・・ゲラゲラゲラ・・・・おい、お前達面白い事してるじゃないか・・・・・ここでお前達をヤルのは無理そ
うだし、ここは一旦引いてやる。」とニヤニヤしながら言い出した。
「お前、エオウィンとか言ってたな。おまえ、人間にしては楽しかったぜ?次に会う時には1万回俺を倒せるようにして
おけよ?楽しみにしてるぜ?ゲラゲラゲラゲラ」と高笑いする。
「俺達が暇つぶしに何処かの国を襲わないように、お前らの大好きな祈りって物にでもすがってるんだな。」
と、空に向けて消えて行った・
パーティは救われたが、魔族はあの魔力を持ちながら魔法を一切使わず、まだ本気でない事を物語る。
この先の事を考えると、重くのしかかるこの結果に、俯くバーン達であった。

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